「感性の森」への期待〔Interview-02〕

3センチの物語

郡山女子大学短期大学部幼児教育学科 専任講師
自然学校キッツ森のようちえん アドバイザー

柴田 卓Shibata Suguru

東北の地で森のようちえんを立ち上げ、10年以上が経ちました。今もなお、森の不思議さと子ども達の感性に魅了される日々です。きっと、森の不思議さや心地よさを子ども達から感じとっているのだと思います。

子ども達と森を歩いていると、必ずといって良いほど木の枝を拾います。その枝を杖にしたり、戦ってみたり、より素敵なものをみつけては取り替えたり、何に使うのかわからないたくさんの枝を集めたり、自分の体ほどの大きなものを目的地まで運ぼうとしたりします。なぜか欲しくなる、何かやってみたくなる、そんな不思議な力が働くのだと思います。大人の都合で遊ばされるのではなく、木の枝1つでも自らの興味・関心と想像力を発揮しながら遊ぶこの力こそ、乳幼児期に時間をかけて丁寧に育みたい力ではないでしょうか。
しかし、慌ただしく生活し結果を求められることに慣れきった私たち大人は、そばで見守ることや待つことの大切さをわかっているはずなのに上手くいきません。私自身も「もっとこうしてみたら?」という「余計な一言」で子どもの感性と創造力を停止・破壊させてしまうことがありました。
震災復興で関わったあるキャンプで、子ども達の主体性を大切にするために、大人が見守ること・待つこと・手を出さないことを「3センチの我慢」(大熊雅士氏)というフレーズで表現しました。いつでも危険をコントロールできる距離感と安心感を保ちつつ、手や口を出さずに見守るという大人の心構えです。このフレーズはデンマークの森のようちえんで見てきた、心地よい子どもとの距離感に通じるものでした。この手や口を出したいけど出さない我慢の中にこそ、子どもの興味・関心を知り、何を選択し、どのような方法で成し遂げようとしているのかを知るヒントがたくさん詰まっていたのです。今では、この3センチの中にある物語を読み解くことが、森のようちえんの一番のおもしろみになりました。

ぜひ、大人も魅了される素敵な『感性の森』で、この3センチの物語を楽しみながら、子ども達の豊かな感性と、心の底に置き忘れていた自身の感性を再発見してみてはいかがでしょうか。

プロフィール

柴田 卓(しばたすぐる)

1978年 北海道出身
2004年 自然学校キッツ森のようちえん設立 代表(2015年4月よりアドバイザー)
2015年 郡山女子大学短期大学部幼児教育学科 専任講師
専門:野外保育 比較保育(北欧) 健康教育他
MONみやぎ野外教育ネットワーク代表